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2007年8月 5日 (日)

考えさせるということ

季刊教育フロンティアNo,1 教育出版1963 p8-15
「プログラム学習における思考の訓練について」

■考えさせるということ

 以上が予備的考察である。思考はどういう条件で進むかということを考えたのであるが、それは、これからその思考の訓練について考えるためである。これからが教育の問題である。思考の訓練の場の条件を考えるわけである。

 ところで、はじめに一つだけ前提を考えておかなくてはならぬ。ここで問題とするのは「思考の訓練」であって、従来とかく教育で考えられていた、分からせるとか、覚えさせるとか、教えるとかいったこととはニュアンスが異なる。ニュアンスばかりでなく、実は本質が違うのであるが、それはおいおいわかっていただけると思う。つまり、考えることができるようにするということを問題にしているのである。

 考えることができるようにするには、考えさせなければならぬということはいうまでもあるまい。考えさせるというのは、先の予備的考察からすれば、話を聞かせても、本を読ませても、物を見せてもできることはできるということはわかると思う。しかしその場合に大切なことは、話を聞いたり、本を読んだりするものの考えるという働きが大切なのであって、教師が話をすることイコール生徒が考えるということではないのである。教師の話が刺激となって生徒の思考が進まなくてはならないのである。聞けども聞こえずという状態で音を聞くのではない。聞くことイコール考えるという形で、聞く働きが進まなくてはならぬということである。

 それには聞きながらつかえるところがあったら、それがその場ですぐ解消されなければならない。生徒がつかえている間に教師の話が先に進んでしまえば、生徒は考える活動を中止しなくてはならぬ。それでは考える訓練をさせることにはならない。

ところで教師は一つの考え方を進めているのである。それを話しているのは、生徒にもそのように考えてもらいたいのである。それは話の変わりに文字で書いても同様である。それを読んでそのように考えてもらいたいわけである。一つでもつかえてその考えが進まないということがないようにしなくてはならなぬのである。そうするには教師は結局、ゆっくり、一くぎり一くぎりずつ話してゆく。あるいは読んでもらうということにするより仕方がない。そして一くぎり一くぎりわかっていって、全体がわかれば一応教師と同じように考えてもらったということになるであろう。
 
 しかしそれで考える訓練をしたことになるであろうか。それは確かに一つの段階ではあるが、考えるということはいつもそんなにゆっくりと進んでいるものではない。教師と一緒に考えてもらいたいと教師が思うことの中には、その考え方の筋がたどられるということの他に、時間的な要素も含んでいる。つまり一定のスピードで、そう考えてほしいのである。すらすらと考えてほしいということを含んでいる。そうなってはじめて、教師が考えたと同じように考えたことになるのである。そのような訓練が実は大切な訓練である。そこではじめてゆっくりと一くぎりごとに話して聞かせて、一緒に同調してもらう。その次にはもっと早めに話して同調してもらう。こうして教師が考えることと同じように考えることができるようになれば、はじめて、ある一つの考え方を身につけたということになろう。
 
 このプロセスは、何か一つの技能を身につけるプロセスとよく似ていることに気づくであろう。たとえばダンスを習う時、クイック、スロー、クイック、スローとはじめはゆっくりやり、くり返してしだいに早くなっていくプロセスを想像してみるとよいであろう。考えるということも一つの技能として身につけて行く必要があるのである。

 話をしたり、物を読ませたりして考えを訓練して行くには、上に述べたような配慮が必要である。そうなると、一番重要なことは、生徒のペースである。そのペースが次第に早くなって行けばよいのである。それは50人の一斉授業という形ではなかなか考えられないから、個別の方式をとらなくてはなるまいということになる。話を聞くのも、本を読むのも、結局同じように考えるというのであれば、話のかわりに、読む物によって思考の訓練をしてもよいことになるのではないか。(つづく)

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