はじめに
矢口新(はじめ)の研究はこれまで学会に発表されていないためあまり知られていないが、今日の教育問題、教育改革を考えるさまざまな示唆を与えてくれる。あらためて注目したいと思う。
矢口新は、1913年生まれ。東京帝国大学文学部で教育学を学び、卒業後は岡部教育研究所(貴族院議員岡部長景が創設)で恩師海後宗臣の指導のもと教育調査に従事する。その後、軍隊に5年。戦後は岡部教育研究所の後身の中央教育研究所で、社会科カリキュラム川口プランの開発、視聴覚教育にも率先して取り組み社会科教材映画体系の作成を指導した。
1950年国立教育研究所へ移り、学力調査、青年教育調査などの傍ら、富山県や茨城県水海道市などで地域の現実に基づくカリキュラム開発を行う。同時に当時日本に入ってきたプログラム学習方式を研究し、脳科学にもとづく独自の行動形成理論を追求。それを教育現場に普及するため、1968年財団法人能力開発工学センターを設立した。
以後、企業内教育を中心にシミュレータを使い協同で学ぶ実践的学習システムを次々に開発し実践するとともに、学校教育においても、学習用シミュレータを使った理科電気の学習やコンピュータ学習の探究プログラムを開発し、学習実験を各地で行っている。
矢口はその生涯を通して、学習は生活の現実の課題を解決するプロセスで成立する、そのために学習者が主体的に課題に取り組む学習の場をつくることが教育の仕事であると訴え、実践してきた。矢口のさまざまな著作からそれを具体的に紹介していきたい。(S)
★関連ブログ/教育フロンティア矢口新
目 次
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1.まえがき・目次
2.行動的人間を育てる学習システム (1970?)
○行動的人間を育てる学習システム
○1)学習システムの転換はなぜ必要か
○2)人間を育てる学習の基本は何か
○3)学習するシステムはどのように設計するか
○4)学習環境をどうつくるか
○5)トータルシステムを考える
3.思考の訓練について (1963)
○1)プログラム学習における思考の訓練について
○2)人の話を聞くこと・考えること
○3)本をよむこと・考えること
○4)物をみること・考えること
○5)考えさせるということ
○6)関心の持ち方を整理すること
4.日本近代教育史事典から (1971)
○近代教育史事典から
○明治前期の産業教育
○明治後期の産業教育
○大正・昭和前期の産業教育
○第二次大戦後の教育思想・教育研究について
○教育調査について
○教育の実験的研究について
5.視聴覚教育・メディア教育
○新教育と映画(1950)
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戦後新教育のカリキュラム運動、地域教育計画、社会科教育、視聴覚教育、プログラム学習、産業技術教育などの実践的研究者、矢口新の仕事と言説を紹介するブログです。
投稿: 榊正昭(能力開発工学センター) | 2007年8月13日 (月) 17時04分