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2017/06/28

15. トイレのサンダルの話

 前回から、矢口と関係があった方々が矢口をどう捉えていたかということについても、このブログで紹介していくことにしました。しかし実際に書いてみると、簡単ではありませんでした。矢口に関わった方々の回想などを、筆者が引用して紹介する場合、引用させていただいた方にご迷惑をかけることがあるからです。
 
 例えば、次のような事例です。

 富山県教育研究所におられたKさんが、東京杉並区井荻にあった能力開発工学センターを尋ねたときの回想です。(70年代前半)

『・・・センターから失礼する時のことでした。我々二人をトイレに案内された先生は、トイレ内の木製のサンダルの乱れをみると、ちょっと悲しげなお顔をなさって、丁寧に並べ変えられました。そして一言「所員の躾けには十分気を配っているんだがね」と、おっしゃいました。未だに忘れがたい一言であります。』(1991年4月 「アドヴァンス・サロン」第27号より抜粋 )
 
 この回想は、矢口の几帳面な性格を示す一つのエピソードですが、一方でセンターの所員はトイレのサンダルを脱ぎ散らすだらしない人間だといわれているわけですから、この回想を引用した筆者は、センターの所員に対しても、また「所員の躾けには十分気を配っているんだがね」と言った矢口に対しても、そしてこの回想を書いたKさんにも迷惑をかけていることになります。

 実は筆者も、矢口がトイレのサンダルを並べるだけでなく、洗面台の汚れや石鹸の汚れなども気がつくとすぐ自分で洗っているのを見たことがあります。ですから所員も、矢口に習ってサンダルを並べ、洗面台を洗っていました。しかしこのトイレは、同じ建物に入居する他のテナント(機械技術系の検査機関や研究機関)の人たちも共同で使っていて、清掃員が毎日清掃しているにもかかわらず、1日が終わる頃にはまた元のもくあみになっていました。
 つまり矢口が「所員の躾けには十分気を配っているんだがね」と言ったのは、センター所員がダメだと言うことではなく、またお客さんへの単なる言い訳でもない。行動形成の方法論をずっと研究・指導してきた矢口自身もなかなか解決できない、その無念の思いを込めた述懐だったのではないかと思うのです。

 とまあ、矢口についてのわずか数行の回想を紹介するのにも、いろいろ考えさせられ、気を使い、言い訳している次第です。(S)

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